【STAT×小路氏 特別対談】STATはお寺に受け入れられるのか?

お寺のDX化の現状と課題をプロに聞く!

2025年4月21日より正式にサービス開始をした宗教法人向け会計ソフトのSTAT。

開発陣が自信を持ってお届けするクラウド型会計ソフトですが、果たしてお寺に受け入れられる存在となれるのか…

そんな疑問をぶつけるべく、NHKや朝日新聞といった各種メディアにも取り上げられ、仏教タイムスで「お寺のためのデジタルトランスフォーメーション」の連載もされていた「寺院デジタル化エバンジェリスト」の小路竜嗣(こうじ りゅうじ)氏にお寺のDX化やデジタルシステム導入の現状と課題についてお話を伺いました。

ゲスト

小路 竜嗣

寺院デジタル化エバンジェリストの

浄土宗善立寺副住職
2016年から寺院デジタル化エバンジェリストとしてお寺とITについての啓蒙活動を展開。
2021年、寺院ITアドバイザーとして開業。
2023年、大正大学客員研究員。同年、認定DXアドバイザースペシャリスト資格取得。

小路氏の各種活動や記事はこちら

聞き手

佐竹 貫永

寺会計STAT共同創業者/CEO
浄土真宗 真宗大谷派僧侶。
自坊の住職が決算業務に苦労している姿を見て、宗教法人向け会計ソフト「STAT」の開発プロジェクトを立ち上げる。
2025年4月にSTATをリリースし、CEOとして運営を行う。

聞き手

武井 柊悟

寺会計STAT共同創業者/CTO
大手IT企業勤務。
高校来の友人であったCEOの佐竹より寺会計STATの構想を聞き、ITの力で社会課題を解決しようという想いからプロジェクトに参画。
CTOとしてSTATのWebアプリ、スマホアプリの開発を手掛ける。

なぜお寺はDX化が進まないのか?

問題①:宗教法人向けのITサービスが無い

佐竹

本日は貴重なお時間を頂戴いたしましてありがとうございます!

宗教法人向け会計ソフト「STAT」を展開している寺会計STATの佐竹と申します。

武井

同じくSTATの開発を担当しております、武井です!

小路

小路です!よろしくお願いします!

佐竹

本日はSTATのサービス開始にあたり、「寺院デジタル化エバンジェリスト」としてご活躍されている、浄土宗善立寺副住職の小路竜嗣様に寺院におけるIT化のニーズや課題について、お話をお伺いさせていただきます。

小路

よろしくお願いします。

寺院のDX化が進まない要因は大きく分けて2つあると思います。

1つ目は宗教法人向けのプロダクトが無いということです。

佐竹

それはまさに我々が感じていたことです!

小路

すでに記事をご覧いただいていたとのことですが、私は過去のキャリアの伝手で、freee社に宗教法人向けの会計ソフトは作成できないかとインタビュー(詳しくはこちら)をしたことがありました。

その際にfreee社から言われたのは、「ニーズが見えないので開発が難しい」ということでした。

「どれくらい使ってくれるか分からない市場に対して人やお金といったリソースを投じることは難しい」と。

他にもベンチャー企業やいくつかの大企業に打診をしましたが、やはり同様の理由で開発には至っていませんでした。

問題②:お坊さんのITリテラシー

小路

2つ目は坊さん側のITリテラシーの問題です

未だに紙とペンで記帳をしているお寺が多く、クラウド型の会計ソフトの前に、まずはExcelなどのツールを使うところから始めなくてはならないお寺が多いと感じています。

佐竹

会社勤めの経験でも無ければ、中々そういったツールを手にする機会が無いですよね…

小路

まさに小さなお寺で会社員などと兼業されている住職は、こういったツールも使いこなせることが多いのですが、お寺を専業にしているお坊さんほど、まずはExcelやWordなどのツールが使えるよう、一つずつステップを踏んでいく必要があります。

佐竹

ありがとうございます、やはりDX化にはいくつも山がありますね…。

私の父も紙とペンで記帳をしており、「Excelの方が楽だよ」と伝えたのですが、結局関数が分からず使いこなせない、数式エラーが出ても対処できない、ということで、私の作成した収支計算書のExcelフォーマットも使わなくなってしまいました。

STATでは「Excelよりも簡単で、複式簿記を知らなくても使えるソフトを」という意識で開発をし、出納帳を中心に極力デザインや機能もシンプルなものに絞っています。

小さなお寺はDXを意識せずともやっていける

佐竹

ちなみに、そもそもお寺の住職やお坊さん、とりわけ数が多い中小規模の寺院においてDX化を進めようという意識はどれほどあるのでしょうか?

小路

まず初めに前提として多くのお寺は小規模です

実際にデータをお示ししながらお話すると、浄土真宗本願寺派の統計調査では半数以上のお寺は檀家数が100件以下であることが判明しています。

こういった寺院はそもそも業務効率化をするまでもなく、現状のアナログな方法でも十分にキャパシティーの中で対応出来ています。

そういった意味では、中規模以上のお寺がまさにDX化のニーズが存在すると考えています。

STATも浸透させるにあたっては、お寺の中でもどういった規模感のお寺を対象にするのか、ターゲットとなるセグメントをはっきりさせた方がいいと思います。

佐竹

非常に勉強になります。

小規模寺院さまにもお使いいただけるよう、価格をかなり頑張って抑えてはいるのですが、今のお話から考えると現状STATをお使いいただくニーズがあるお寺は、300件以上の檀家数を抱えていらっしゃるような中規模寺院であるような気がしています。

現在は出納帳形式ですので、非収益事業のみを行なっている寺院が対象となっていますが、今後収益事業を行っている寺院や、本堂の建設のために特別会計を行うような大規模な寺院向けにもサービスの拡大ができないか検討しています。

今後STATに求められる機能は?

武井

freeeやマネーフォワード、弥生などの大手会計ソフトと違い、STATは宗教法人向けに特化することでお寺の方にとって使い勝手の良い商品としていきたいのですが、小路さまから見て、もっとSTATに備わっていた方が良い機能はありますか?

小路

STATを利用されるお寺はある程度ITに対して感度の高いお寺が多いでしょうから、金融機関からのデータ連携やクレジットカードの明細連携が出来るといいですね。

あとは電子帳簿保存法などにも対応していると、より便利です。

既に宗教法人向けの機能という意味では特化されているので、会計ソフトとしての機能が拡充されるとより使い勝手が良くなると思います。

武井

寺務管理などの方向で宗教法人に対して特化していく方法もあるかと思ったのですが、そちらはいかがでしょうか?

小路

寺務管理、いわゆるCRM(Customer Relationship Managementの略。顧客関係管理の意。)と呼ばれるソフトについては、宗教法人向けの市場は飽和しつつあるのが現状です。

またお寺によってやりたいことがまちまちなので、どうしても機能をあれもこれも…と盛り込んで、幕の内弁当化してしまいかねません。

私の宗派でもCRMソフトの作成を考えていたようですが、結局仕様や機能がまとまらず実現しなかったと聞いています。

収益事業対応など、宗教法人会計の分野に特化されていく方がいいかもしれません。

佐竹

そういえば、浄土宗さんでは立教開宗850年の記念事業で会計ソフトを宗派内のお寺に配布されていましたね。

小路

ただこれはインストール型のソフトなので、不具合対応や税制改正などの際には再度インストールをし直さないといけません。

使用している寺院に対してソフトの入れ替えなどの継続的なサポートをしないと、システムが陳腐化してしまう点に注意が必要です。

武井

STATはクラウド型の会計ソフトなので、その点すぐにシステムの改修ができますし、インストールの必要がないので、最新版を常にお使いいただくことが可能です。

ご意見やご要望を反映し、常に改善を重ねていけるところが強みかと考えています。

…おっと、すみません!気づけばあっという間にお時間が経ってしまっていました、、!

オンラインミーティングのタイムリミットが迫っています…

小路

おや、そうでしたか…!

色々なところで会計ソフトを作ってくださいとお願いをしていましたが、このように実際に作成される方がいることは大変喜ばしいです!

今後ともよろしくお願いいたします!

佐竹

お忙しい中、貴重なお時間をありがとうございました!

お寺の業務を効率化できるよう、引き続き様々な機会でご連携させていただけましたら幸いです!

今後ともぜひどうぞよろしくお願いいたします!

まとめ

今回の対談では、宗教法人向けの会計ソフトというものがこれまで存在しなかったことでデジタル化が進まなかった一方、やはりパソコンやスマホを使用した会計ソフトがどこまでお寺の皆様にとって馴染むかという点が課題であると感じられました。

STATの開発時のコンセプトであった「分かりやすく、使いやすい会計ソフト」であることを今後も念頭に置きつつ、手厚いサポート体制でユーザーの皆様のお声を少しでも多く拾っていきたいと改めて思います。

また同時に、収益事業の対応や金融機関とのデータ連携など、まだまだ利便性の向上に繋げられるポイントについてもご指摘いただきましたので、今後は更なるサービスの充実を図っていきたいと考えています。

お寺の存在意義や、ご縁を結ぶ場としての役割を未来につなぐために、これからも寺会計STATを通じて、少しでもお寺のお役に立てるよう努力を重ねてまいります。

同じ志を持つ方々と手を取り合いながら、これからの寺院のあり方を一緒に考え、つくっていけたら嬉しいです。

小路さん、このたびは貴重なお時間とたくさんの学びを、本当にありがとうございました!

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