宗教法人の2割が税務調査で脱税判定という実態

目次
宗教法人の脱税割合は高い
宗教法人の脱税割合が高いことを皆さんご存知でしょうか?
これらの多くは意図的な脱税ではなく、「脱税状態であることを知らなかった」、「必要な届出や会計処理が分かっていない」という場合がほとんどです。
2023年の産経新聞の記事によると、
『令和4年6月までの5年間で、源泉徴収漏れを指摘された宗教法人は5850法人。このうち不正が認められ、重加算税が適用されたのは20・82%に当たる1218法人だった。』
とのことで、なんと21%、5件に1件の宗教法人がいわゆる「脱税」の判定を受けています。
▼産経新聞
【宗教法人法を問う】宗教法人の税不正割合が突出 知識乏しく、ずさん会計 - 産経ニュース
学校法人や社会福祉法人といった宗教法人と同じ「公益法人等」の中で宗教法人の脱税割合が飛び抜けて高いのです。
<法人別の重加算税適用割合(産経新聞の調査より抜粋)>
源泉徴収漏れ を指摘された 法人数 | 重加算税を 課せられた 法人数 | 重加算税が 適用された 割合 | |
---|---|---|---|
宗教法人 | 5850 | 1218 | 20.82% |
学校法人 | 843 | 20 | 2.37% |
社会福祉法人 | 1774 | 14 | 0.78% |
財団・社団法人 | 694 | 2 | 0.28% |
税務調査で宗教法人がよく指摘される事項
宗教法人に対する税務調査は、他法人と比べて比較的高い確率で行われます。
産経新聞の調査結果からも分かるように、税務署からしても「宗教法人はずさんな管理体制をしている」という印象が強く、狙って調査に入ることが多いのです。
税務調査で宗教法人がよく指摘される事項に次のようなものが挙げられます。
- お寺の経費と個人の支出の線引きをしていない
- 領収書やレシートの保管がされておらず、経費の支出を証明できない
- 源泉徴収などの税務上の申告がされていない
お寺の経費と個人の支出を線引きしていない
宗教法人の経費は、あくまで宗教法人の運営にかかった費用のみが認められます。
しかし、宗教法人の財布と個人の財布が分けられておらず、生活費も法人の財布から拠出している場合は、その支出は個人の所得から支払ったものとして見なされます。
所得に認定されてしまうと、所得を過小申告して所得税を脱税したという扱いにされてしまうのです。
産経新聞の調査では”源泉徴収漏れを指摘された”とありますので、経費と個人の支出の線引きが出来ていない宗教法人がおよそ5850法人あったと推測されます。
領収書やレシートの保管がされておらず、経費の支出を証明できない
税務調査では場合によっては一件一件の取引をつぶさに調べられることもあります。
その際に領収書やレシートを保管していないと、経費支出の証明が出来ず、架空の経費を発生させたと見なされる場合があります。
宗教法人は収益事業を行なっていなければ法人税は発生しませんので、法人として脱税したことにはなりませんが、場合によっては個人の支出をお寺の経費に混ぜ込んだと見なされて、住職個人が所得税の脱税をしたと判定されることがあります。
源泉徴収などの税務上の申告がされていない
住職は基本、宗教法人から給与が支払われている場合がほとんどです。
この場合、住職はサラリーマンと同じですから、宗教法人に対して住職の給与から源泉徴収を行う義務が発生します。
徴収した源泉税は給与支払月の翌月10日までに税務署に納付することが義務付けられています。
ただし、「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請」を税務署に提出していれば納付はまとめて年2回(7月と1月)で問題ありません。
こういった申請書を出さずに源泉税の納付を毎月行っていなかった場合は所得税の滞納と認定される場合があります。
税務調査に備えて宗教法人が行うべき対策
税務調査で指摘されないためには、主に以下のような対策、環境整備がされていると良いでしょう。
- 銀行口座は法人口座と個人口座を分ける
- 領収書を必ずファイルなどで保管し(最低7年間)、入金・出金は出納帳に記録する
- 源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請を提出し、給与は必ず源泉徴収金額を計算する。
出納帳、会計帳簿の作り方は以下のコラムをぜひご覧ください。
領収書の保管方法や源泉所得税に関しては、今後のコラム記事で発信していきたいと思います。
また、InstagramやFacebookでコラム記事公開のお知らせをしておりますので、ぜひフォローしてお待ちください。
▼SNSフォローはこちらから
終わりに 〜清廉潔白な宗教法人運営を〜
宗教法人の運営は宗教者として清廉潔白でありたいと誰しもが思うところではないでしょうか。
近年では宗教法人に対する献金問題が世間を騒がせ、宗教法人のお金の流れと運営の透明化が一層求められています。
「知らなかった」で罪に問われることがないよう、ぜひ会計や税務を意識した運営を考えてみてはいかがでしょうか。
私たち寺会計STATは、単に会計ソフトを提供することが目的ではなく、住職が「お寺の会計や経理は大丈夫。」と胸を張って言えるような寺院の環境づくりのお手伝いを目的としています。
STATの導入如何に関わらず、ご相談を受け付けておりますので、会計・経理の体制づくりについてご相談されたい方、STAT導入前に話を聞いてみたいという方は是非一度お問い合わせください。
※なお、税理士法上の独占業務に該当する税務相談(税務署への税金の申告、および税務署から調査や処分を受けたときの主張や陳述など)はお受けできませんのでご了承ください。